2010年5月17日月曜日

タイ 2006年クーデター以降の騒乱を読み解く

現在、タイではバンコクを中心に騒乱状態になっています。
実際に危ない地域はまだ限られていますが、死者が出ているのは事実です。

このタイの政治状況に関して、少なからぬ誤解があるようですので
一度エントリしておきたいと思います。

なお、アカデミーの世界に身をおいたことがあるなら分かると思いますが
私自身はどこかの党派の肩を持つつもりではありません。
中立的で客観的な事実を観察する姿勢を崩すつもりはありません。

すべての事柄に「好き」か「嫌い」かでしか判断出来ないスーパー二元論者wのオサーンには
中立的な観察というのは、ちょっと理解できないかもしれませんがw

「プミポン国王が出てきて調停すれば万事解決する」
まことしやかに、言われることですが、これは正しくないでしょう。

なぜならば、2006年クーデター以降の騒乱において、プミポン国王は当事者でもあるからです。
プミポン国王が党派を超えて高い尊敬をされているのは事実ですが、
調停は騒乱の一方の当事者が行うことは難しいのも事実です。

もう少し詳しく見てみましょう。
今回の赤服騒乱に到るまで、タクシン元首相がキープレイヤーであったのは異論のないところでしょう。
騒乱の底は、そのタクシンが進めてきた急激な現代化と、国王の提唱する「足るを知る経済」が本質的に相容れないということがあります。

タクシンは功罪ともに大きな指導者でしたが、タイ国家の現代化に果たした役割は巨大なものがあります。
現代化を行うことが果たして本当に幸せなのかどうかは誰にも分かりませんが、
グローバル経済の現代で、他国に遅れることは国民の不満に直結します。

非難を恐れず正直に言えば、「足るを知る経済」では、激化する国際競争でタイが勝ち抜くことは不可能です。
そして、それはタイの外貨収入激減、国民の購買力の減退につながります。
他国に比べて貧しい生活になれば、グローバルな消費社会に既に組み込まれている国民の不満が高まることは必須です。

タクシンの優れた点は、このグルーバル消費社会におかれたタイの現状を正しく理解し、
現代化に向けての政策を次々に実行し、成功させていったことです。

タクシンは地方ばら撒きをした -> だから地方で大人気
と、短絡的に考えるのはあまりに早計です。

凹売り娘と話をしてみても、彼女らでさえ、タクシンの功績が地方ばら撒きだけではないことを知っていることが分かります。
(もちろん、それがグローバル経済の現代でどの程度の重みを持つものかまでは知らないでしょうが)

また、タクシンの支持層は決して貧民層だけではありません。
富裕層にも多数の支持者がいるのは、やはり彼の政策が正当だったと評価されているからです。

このように極めて優れた指導者であったタクシンですが、罪もまた大きいものでした。
ここでは詳細は述べませんが、異常な蓄財と脱税、身内びいき、外資の大量導入は国民の反発を買いました。
また、彼の急激な現代化政策に取り残された層の不安が高まっていったのも確かです。

タイは、立憲君主制ということになっていますが、実際には国王の権力はそれ以上にあります。
実行力を伴なう枢密院は国王の実力行使の機関であり、国王は立法の拒否権すら保有しています。
さらに、軍隊は国民の軍隊ではなく、国王の軍隊です。
王室の財産はタイのどんな財閥よりも巨大なものです。

プミポン国王の高潔さ、人格は尊敬されてしかるべきですが、
そういった尊敬とは別に、
システムとしてタイの王制では、通常の立憲君主制ではありえないほど国王の権力が強いことは認識する必要があります。

タクシンの政策に反感を持つ層が、首相以外で強力な力を有する国王を戴くようになるのは自然なことでした。
この結果が、2006年のクーデターであり、黄色シャツの空港占拠です。

その後アピシット政権の誕生を受けて、逆にタクシン復権を目指すと言われる赤シャツ党が
騒乱を起こすわけですが、国王の意図のあるなしに関わらず
国王は一方の党に戴かれている、つまり当事者になってしまっていることはお分かりいただけるかと思います。


国王が出てきて水戸黄門的に裁いて終り!
というのは、幻想に過ぎません。


今回の騒乱がどのように収まるかはまだ誰にも分かりません。
タクシンは皮肉にも国連の調停を提唱しているようですが
(タクシンは首相時代、国連を毛嫌いしていた)
それで騒乱の根が解決するものでもありません。

一方、(もはやありえないことですが)仮にタクシンが首相に復帰したとしても
もはや国民全体からの支持を得ることはできず、早晩政権は崩壊するでしょう。

調べれば調べるほど、2006年以降の騒乱の根は深いことが分かります。

ただ騒乱の中でも明るい材料は3つあります。


1) 人命の尊重
逆説的ですが、今回の騒乱の中で人命は尊重されている方だとも言えます。
赤シャツも軍も大量殺人を避けています。
これは全体主義的な国や後進途上国ではありえません。

旧ソ連や中国、アフリカの後進国なら軍が赤シャツにとっくに総攻撃して鎮圧しています
殺人が散発的なのは、逆にタイがある程度成熟した国である証拠です。

だからこそ騒乱が収束しないと言う皮肉なことではあるのですが。

2) タイ経済の堅調な伸び


この長引く騒乱の中でも、タイ経済は実は大きなダメージを受けていません。
また、投資家も先週まではタイ経済の評価をそれほど下げていません。
混乱が今後続いたとしてもタイ経済が成長することは誰もが信じていますし、確実です。

3) 各国(特に日本)からの援助

この騒乱の中にあっても、我らが大和男児が、
大和魂の誇りと揺ぎ無い自信をもってタイのフェーンに送金し続けています!w

おかげでタイの凹売りたちは、騒乱にも関わらず、今日も元気に生きていけます!!www


騒乱の中でもキラリと光る、我ら大和男児の貢献にチャイヨー!!w



   

  凹売り姫(獣)たちがエロ高僧たちに粗相を働いてはおらぬかどうか加齢臭オヤヂが自主的に行っている巡回パトロール、通称自主パト[(c) 洗師匠]の記録をチェックされたい方は以下をヌリック

  タイ情報ブログランキング参加用リンク一覧 にほんブログ村 タイ情報

全財産を差し出した後は命まで差し出す敬虔な殉教者wたちの涙の記録を読みたい方は以下をヌリック  
  フィリピン情報ブログランキング参加用リンク一覧 にほんブログ村 フィリピン情報    

にほんブログ村 海外生活ブログ タイナイトライフ情報(ノンアダルト)へ人気ブログランキング

10 コメント:

キーニャオ さんのコメント...

タクシンは良くも悪くも田中角栄なんですよね。
角栄の政治も単に地方にばら撒きだけじゃなく、高度成長期の日本ではやるべき政策でした。
ただ、反面、金権政治、密室政治という負の面もあります。

日本では内乱が起こらなくて良かったです。

そう考えると誇り高き大和民族は他の国より
進んでいたという事で、僕らに揺ぎ無い自信を与えてくれてるのでしょう。

重樹 さんのコメント...

 さすが高田隊長だけあり、国際史を踏まえたタイ認識は新聞より正確で納得が行きました。

 一つ質問なんですが、私は数ヶ月イサーンにいたんですが、貧乏臭い感じはまったくしませんでした。チェーンライ出身の彼女も、イサーンは街がきれいだと言ってました。凹売り娘の聖地なのにもかかわらず。

 むしろ、タイの中でも街の清潔感は一番なんじゃないでしょうか?

 どこの農村の人がデモをやってるのかしりませんが、命がけでデモをやる理由は、タクシンというボスのエゴに拝金主義のタイ人が乗せられているだけのような感じが私はします。

ぶん左衛門 さんのコメント...

タイは、もう過去にいろいろ踏み出してしまった以上、「ブータン」にはなれませんからね・・・
いずれにせよ、分かりやすい解説ありがとうございました。

え?僕?もちろん私設ODAとして日夜遠隔タンブンに励んでますよwww

Teada さんのコメント...

素晴らしく分かりやすい解説でした。
2006年の件も含めて説明されているので、今回のデモの概要がとても捉えやすかったです。
差し支えなければ僕の日記からリンクさせていただいてもよろしいでしょうか?

高田 亨 さんのコメント...

キーニャオ さんのコメント...

> タクシンは良くも悪くも田中角栄なんですよね。

鋭いですね。確かにタクシンは角栄との共通点が多いですね。
- 金権政治
- 地方ばらまき

一つあえて言うとすると、タクシンの経済政策ですね。
タクシンの経済政策は時代に適合していただけではなく、
グローバル経済を先取りした先進的なものでした。
その点を、角栄と同様にみなすと誤解を招くかもしれません。

> 僕らに揺ぎ無い自信を与えてくれてるのでしょう。

なんと言っても我々誇り高き大和民族は神の国の民ですからねw

高田 亨 さんのコメント...

重樹 さん

> 一つ質問なんですが、私は数ヶ月イサーンにいたんですが、貧乏臭い感じはまったくしませんでした。
> チェーンライ出身の彼女も、イサーンは街がきれいだと言ってました。凹売り娘の聖地なのにもかかわらず。

> むしろ、タイの中でも街の清潔感は一番なんじゃないでしょうか?

これはすごく重要な指摘です。
重要なポイントがいくつかあります。

- タイの首都と地方の所得格差は小さい
-> 格差はおおよそ3:1なのですが、これは他の国に比べてかなり小さい
-> 地方だから貧乏というのはタイには当てはまりにくい
- イサーン経済は出稼ぎに頼る率がかなり高い

「イサーンが貧しい」という指摘は必ずしも正しくありません。イサーンにもお金持ちはかなりいますし、他の国に比べれば、その割合はかなり高いわけです。

ただ、そのイサーン経済がそれなりに豊かな理由の一つは、凹売りを含む出稼ぎにあることは間違いありません。

「イサーンが凹売りの聖地」「イサーンはそれなりに豊か」
というのは、実は矛盾せず、両立しているのです。

さらに言うと、イサーンでは(他の国の田舎もそうなのですが)所得別に
村を構成しますので、金持ち村に行った場合、貧乏な家は見あたらないのです。

街の清潔感に関してはイサーン人の民度の高さや、水利がそれなりに豊かであることも影響しているかもしれませんね。

UDD参加者にイサーン人が多いのは確かですが、金持ちイサーン人もかなり参加しているようですし、バンコクでも潜在的なUDD支持者は多いようです。

いずれにせよ、ご指摘のように政争の具になっている面は隠せませんが..

高田 亨 さんのコメント...

ぶん左衛門 さん

> タイは、もう過去にいろいろ踏み出してしまった以上、「ブータン」にはなれませんからね・・・

そうなんですよ。
そのブータンでさえ、一度大量消費生活を国民が味わってしまったらもう戻れないでしょう。
自給自足経済が理想!!という経済理論が成立するのは寒汰(さむた)の頭の中くらいですw

> え?僕?もちろん私設ODAとして日夜遠隔タンブンに励んでますよwww

高僧としてのますますの修行、頭が下がりますw

高田 亨 さんのコメント...

Teada さん

> 素晴らしく分かりやすい解説でした。

参考になったのなら何よりです。
私の知識も見聞もプロの方々には遠く及びませんが、
少しでも客観的で中立的なタイ(およびその他の国)の理解に役立てれば幸いです。

> 差し支えなければ僕の日記からリンクさせていただいてもよろしいでしょうか?

はい、もちろんです。
今後ともどうぞよろしくお願いします。

RandomFuckers さんのコメント...

タクシンが田中角栄的な側面もあるということですが、田中角栄の行った官僚主導から政治家主導に、また都市の富を地方へ還元する政策により、現在での都市部と地方での経済格差は、タイとは比べるまでもなく日本のほうが平準化されていると感じます。(経済指標を読んでる限りではです。)
タクシンは人間としての器量がどれだけあるのかが自分には判りませんが、中進国では政治手腕、能力よりも大事ですが、この器量がなければ政治家として勝者にはなれないと思います。日本、米国では、ワンフレーズの連呼で国民の支持を得る人物を排出してしまってはいますが、器量がなくてもまだ官僚組織に知と理が多少はありますから。
高田さんがよく言うタイの階級社会については理解していませんが、彼らにもノブレス・オブリージュはあるんでしょうか?外国から金で赤服に指示をしているだけのタクシンは、真逆な人間に思えてなりません。また赤服も軍隊に対抗できるだけの統率力のある人間がいるんでしょうか。今村均のようなのが1人でもいればと思います。
結局タクシンの末路は角栄と同じく、裏からの影響力をもってしても、表舞台ではもう活躍できないのでしょうね。

高田 亨 さんのコメント...

RandomFucker さん、

いや、改めてすごい名前ですねw

> 田中角栄的な側面もあるということですが、

類似性が多く見られると言うことであって、違いは当然あるでしょう。

> 現在での都市部と地方での経済格差は、タイとは比べるまでもなく日本のほうが平準化されていると感じます。

二つポイントがあると思います。

- 先進国は一般的に所得格差が小さい (中進国のタイと先進国の日本をそのまま比較しても意味がない)
- 日本は先進国の中でも最も所得格差が小さい

都市部と地方の経済格差についても、同様のことが言えるのではないでしょうか。
また、日本の都市部と地方の経済格差が小さいのは田中角栄の功績が全てではない気もしますが、どうなんでしょうね。

いずれにせよ、田中角栄の経済政策の効果については私は不勉強で正確に把握してないですが、
田中角栄とタクシンを比較することは本エントリにおけるポイントではありません。

> タクシンは人間としての器量がどれだけあるのかが自分には判りませんが、

何をもって勝者というべきなのかは分かりませんが、タクシンの経済政策が少なからぬ成功を収めたのは事実でしょうし、同時に国民の少なからぬ層から強い反発を受けたのも事実でしょうね。

「コイツ悪いヤツ。だからコイツのやること全部嫌い!」と言う短絡的な発想は
P系の一部の知能障害レベルの人間に任しておいてw
多少なりとも知性のある我々は、政治家の功罪は分けて判定すべきでしょうね。
どんなひどい人間が行ったことでも、正しい政策は正しい政策と評価されてしかるべきです。

> 彼らにもノブレス・オブリージュはあるんでしょうか?

私の個人的な感想では、タイに限らず、途上国の富裕層にノブレス・オブリージュを感じることは少ないですね。
逆に上になるほど、特権階級的な意識がより強固になっている印象があります。

UDDに関して言えば、本エントリでもう少し書くべきだったかもしれませんが
UDD = タクシン一派 ではないのですよね。
単なるタクシン支持者の集まりでは、ここまで運動は広がらなかったでしょう。

そういう意味では、UDD にとってタクシンは単なる神輿になっています。

黄色服がプミポン国王を担いでいますが、プミポン国王の意志を必ずしも反映してないのと同じです。

逆に言えば、タクシンの UDD に対する指導力にはかなり疑問符がつきます。

> 結局タクシンの末路は角栄と同じく、裏からの影響力をもってしても、表舞台ではもう活躍できないのでしょうね。

タクシンの政治生命はもうほとんど終わっていると考えてよいでしょう。
本エントリ中にも書いた通り、仮に(ありえないことですが)首相に復帰したとしても
以前のような改革を主導することは無理です。
安定しない政局で大きな改革を行うことは不可能です。
そもそもその意志があるかも定かではありません。

現在のタクシンの経済政策の方針も分かりませんし、
首相在任時のタクシンとは別人と考えて分析した方が正しい気がします。